worlds of last generationシリーズ 第一部

「大丈夫だよ。ゆぅちゃんはそんな事気にしなくても良いからね?」
そう言いながら歩いている静夜は、何故かちょっとだけ機嫌が良くて…さっきまで喧嘩していたとは思えない程、柔らかな口調だった。

「そんな事って…いくら簡単な作業だからって、今からこんなにゆっくり歩いてたら作業できないよ?」
少し心配しながら聞いても、彼から返ってくる言葉は同じもので…
私は溜め息を吐いて、それ以上追及するのをやめた。

私達が向かっている科学室は、特別教科棟と呼ばれる別校舎の三階にある。
そのため、私達がいる校舎と別校舎を繋ぐ渡り廊下を通らなければならないのだが…――

「静夜…」
「ん?」
先程よりも機嫌が良いのか、鼻唄を歌っている彼に声を掛ける。
「渡り廊下は三階の階段脇」
「そうだねぇ」
「此処屋上」
「風が気持良いね、ゆぅちゃん」
爽やかに言われても困る。
と言うか…私の言葉は無視ですか?

「授業」
「今日はお休み!」
いやいやいや。
お休みとか勝手に決めましたよこの人!
私これでも授業サボった事ないのが自慢だったのに!!
「授業中寝てるのに?」
「あれは睡眠学習です。じゃなくて…何人の心読んでんのさ!!実はエスパ―?」
心の中に沸き上がる思いに対する言葉が投げ掛けられて、思わず声をあらげた。
彼は少し困った様に笑うと口を開く。