「静夜?」
その名前を口にする私に、最高級の笑顔(クラスの女子曰く)を向けてくる。
「なぁに?ゆぅちゃん」
酷く甘ったるい声で返事をする彼に、小さく溜め息を付く。
この声も態度も…慣れてしまった自分に
時の流れは偉大だな――
と本気で思った。
「分かったから手、放して?次の授業の準備が出来ないから」
私がそう言うと、その表情は変えないまま手を放す。
彼は小さな頃から人懐っこく、良く笑っていたのを覚えている。
私がこの街に越して来たばかりの頃住んでいたマンションのお隣さんで、誰も友達がいなかった私と一緒に居てくれた。
優しい人で、一緒にいると酷く安心した私。
けれど…彼はたまに酷く冷めた目でものを見る時があるのを知って、幼心に少し恐怖を抱いた事がある。
それから彼の事が良く分からなくなった。
どんなに上手く探りをいれても、簡単にあしらわれてしまう。
離れたかと思えば気付けば隣に居たり…何を考えてるのか分からない。
幼馴染みとはいえ、少し苦手意識を持っているのはきっと――
その掴みどころのない自由奔放さと、たまに見せる冷たい視線が恐いから。
その名前を口にする私に、最高級の笑顔(クラスの女子曰く)を向けてくる。
「なぁに?ゆぅちゃん」
酷く甘ったるい声で返事をする彼に、小さく溜め息を付く。
この声も態度も…慣れてしまった自分に
時の流れは偉大だな――
と本気で思った。
「分かったから手、放して?次の授業の準備が出来ないから」
私がそう言うと、その表情は変えないまま手を放す。
彼は小さな頃から人懐っこく、良く笑っていたのを覚えている。
私がこの街に越して来たばかりの頃住んでいたマンションのお隣さんで、誰も友達がいなかった私と一緒に居てくれた。
優しい人で、一緒にいると酷く安心した私。
けれど…彼はたまに酷く冷めた目でものを見る時があるのを知って、幼心に少し恐怖を抱いた事がある。
それから彼の事が良く分からなくなった。
どんなに上手く探りをいれても、簡単にあしらわれてしまう。
離れたかと思えば気付けば隣に居たり…何を考えてるのか分からない。
幼馴染みとはいえ、少し苦手意識を持っているのはきっと――
その掴みどころのない自由奔放さと、たまに見せる冷たい視線が恐いから。


