worlds of last generationシリーズ 第一部

確かに…鴫野は普段他人の心配をする事がない。
でも、それはただ相手の様子に気付かないだけで、そこまで気持悪がらなくても良いような気がするのだが…。
「大丈夫だよ彩葉。別に具合いが悪いわけじゃないから」
それでも私は、小さな疑問を口にする事なく笑顔で答える。
彩葉はあまり納得していないようだけど、それ以上の追求はしてこなかった。
それから他愛のない話を二人でしていると、程なくしてチャイムがなる。
彩葉は私の頭を軽く叩くと、自分の席に戻っていった。

憂鬱なモニター授業が始まり、私はfortoPCを操作しながら仮面の男の事を考えていた。

“どうしてここまで気にしているんだろう…”

自分でも不思議なくらい頭から離れなくて戸惑う。
心の中に渦巻く何か――

私にはそれが何なのか分からなくて、余計に混乱する。
只でさえ人知を越えた出来事だったのに…
加えて感情も乱れていて、自分自身でも制御が効かなくなってしまう。
混乱を解こうとすればする程、余計に酷くなっていく。
まるで絡まった糸みたい。
私は混乱する頭の片隅で思う。

そうしている内に…何時もは憂鬱でしょうがない教師の声も、退屈なモニター授業も終わっていた。
ふと自分のfortoPCの画面を見ると、一面に仮面の男の画像と会話文等が事細かに載っていて…焦りながら消す。
「な〜にやってんの!」
後ろから肩を叩かれながら言われた言葉。
その声の質で、振り向かなくても彩葉だとわかる。
「ん？何が？」
内心…さっき写し出されていた画像を、彩葉に見られたんじゃ無いかとひやひやしていたが、平静を装い出方を伺う。