worlds of last generationシリーズ 第一部

「はよ鴫野。何だよ、あんな事って」
そう柔らかな笑みを浮かべながら問う仲戸に、鴫野はさも面白そうににやりと笑う。
「それがさ、朔ってば深月とおでこくっつけて見つめあってたんだぜ?もう俺は、こんなとこでキスするんじゃないかとどきどきしたぜ」
そんな事を身振り手振りを付けながら話していた。

キス…?
何で私が小手川と?
最初に浮かんだ言葉はそれだった。
こいつ何言ってんだろう?
小手川が私にキスなんてするわけないのに。
それでも鴫野は仲戸に話しかけている。
私はただその光景を遠巻きに…まるで他人事のように見つめていた。

「深月!」
そんな声と共に肩を掴まれて、はじめて自分が呼ばれていた事に気付く。
何だか今日はぼーっとする日だな…と思いながら肩を掴んでいる鴫野を見る。
彼は心底脅えた様に私を見つめていた。
「どうしたんだよ深月!何時ものお前なら、あの場面で必殺技繰り出すとこだろ!?お前熱でめあんのか?」
そう言いながら私を軽く揺する。
鴫野が何言ってるのか分からない…
さっきこいつは仲戸と何を話していたんだっけ?
そう思いながら私は会話についていけなくて、少し困惑していた。

「朔が深月に額を当てた時に、怒らなかったって話してたんだよ」
私の心を察したのか…仲戸が説明してくれる。
けれど何故か怒る気にも成れなくて――
「そうなんだ…」
それだけ言うと、私は自分の胸ポケットからデジタルファンタズムを取り出す。
気付いた時に出してあげないと、今日は外に出してあげられない様な気がしたからだ。