worlds of last generationシリーズ 第一部

「本当にどうした?何か変だぞ」
今度は本当に心配そうにしながら私の顔を覗く。
少し顔が近くて…また心臓が跳ね上がる。
「いや…本当に何でもないから!!それよりも早く行こう、信号変わっちゃうよ」
私は動揺を隠すために、一気に巻くし立てる。
それでも彼は納得いかない様な表情を浮かべていた。
けれど、これ以上聞いても無駄だと判断したらしく、何も聞いてこない。
そんな彼の様子に、内心ほっとしながら歩く通学路。
さっき小手川の顔を見て胸の鼓動が早くなったのは、きっと昨日の出来事のせいなんだ。
私は自分に言い聞かす様に…何度も頭の中で反芻しながら、学校まで彼と歩いて行った。

学校に着くと、何時もの喧騒が私を包み込む。
まだ整理されていない頭の中に、雑音の様に入ってきては掻き乱す。
何時もと同じはずの日常。
けれど何故か…私だけ置いて行かれた様な錯覚に襲われた。
みんなが私を――
と言うわけではなくて、ただ漠然と全てに置いて行かれる様な気がしただけ。
例えるならそう…

“世界が私を置いて行く”

そんな感じがして、胸が軋んだ。

「おい!」
そんな切羽詰まった様な声と同時に、私の肩に力が加えられ後ろへと引っ張られた。
見ると小手川が、物凄く心配そうな顔で私を見つめている。
「あ…何?」
私がそう言うと、小手川はその表情を崩さないまま答えた。
「お前が教室のドアに突っ込もうとしてたから止めたんだよ。本当にどうしたんだよ、やっぱり変だぞ」
そういう小手川の顔が、近付いてくる。