その夜、祐樹は部屋のベッドの上で特にする事も無く、仰向けになって天井を見ていた。
　このまま寝てしまおうと祐樹が目を閉じた時、部屋の扉がノックされた。

「……開いてるよ」
「ごめんなさい……。寝てました？」

　やってきたのは唯華だった。祐樹は起き上がりベッドに腰掛けた。

「寝てはないよ。何か用？」

　そう返事すると唯華は部屋の中に入ってきた。

「今日は有難うございました」

　唯華は頭を下げて嬉しそうに言った。

「別に礼なんか……。結局負けたし」
「でも！　試合になったのは国崎君のおかげだし、それに相手はすごい人だったし」

　祐樹の言葉を必死に否定する唯華。

「それにマウンドで投げてる国崎君、すごくかっこよかったです！」

　なんの邪気も無い笑顔でそんな事を言われて祐樹は顔が熱くなるのを感じた。

「そ、それはどうも……」

　祐樹はそっぽを向いて答えた。まともに唯華の顔を見れなかっただけだが……。

「ホントに今日はありがとうございました！」

　最後にそれだけ言うと唯華は部屋を出て行った。