「それから、今日いえ正確には昨日ですが、熱があるから家に帰れと言ったんですが・・・」


「帰りたがらなかったんですか?」


「はい」


「そうですか・・・」


「それで、ここに連れて来た理由ですが」


「はい」


石川の母親の表情は、どんどん暗くなってた。


「僕が働いてる店の前をちょうど愛花さんが通ったんです。たまたま僕が外に居て」


「それで」


「僕がこんなことを言うのも、何なんですが。帰りなさいと言いました」


「はい」


「愛花さんは、帰るって言いました。それで、僕に背を向けたんです。そのとき、立ちくらみか何かを起こしたみたいで、その場にしゃがみ込んでしまって」


「・・・」


「急いで傍に行きました。そしたら、泣いてました」


「泣いてた・・・」