「めんどくさくなったの」


愛花は、窓の外に視線を移しながら俺に言った。


「親の喧嘩見て、人間関係が嫌になってた」


「そっか」


「前先生に、大切な人なんかいらないって言ったでしょ?」


「ああ」


「言う前から、私は人と距離を取ってたのかもしれない」


「今なら、また友達に戻れるんじゃないか?」


そう言った俺に、愛花は悲しい目を向けた。


「うんん、いいの。今さら友達なんていらない」


「ほんとに?」


「ほんとは、まだ怖い。人と、深く付き合うこと」


そう言うと、愛花はお弁当の蓋にお箸を置いた。


「いつか、壊れるんじゃないかって。そう思っちゃう」


愛花は、ため息をついた。