和也達に声を掛けてきたのは、バスケ部キャプテンの渡来だった。

『生意気な事を』と言っていた割には、さほど不愉快そうな顔をしているワケでもなかった。
和也は渡来の事を、人望の厚いキャプテンみたいだな、と感じた。

「お前ら二人で仕掛けて来いよ」
そう言って渡来は和也にボールを放り投げた。
和也と敏男は一瞬戸惑ったが、すぐに二人で切り込んで行った。
和也と渡来との身長差を考えると、和也がゴール下で勝負するのはかなり不利だ。だが、和也はスピードには自信があった。

一気にボールを運んで、敏男にパスを回す。

しかしボールは敏男の手に渡る前に渡来にカットされた。

その後も何度となく速攻を仕掛けたが、結局決まったシュートは外から放った一本だけだった。