「行ってきます」

　和也はさっさと朝食を済ませ、食器を洗っている母親の背中に向かってそう言うと、そそくさと逃げるように玄関へ向かった。

　中学に入学した頃は、クラスの中でも身長はどちらかと言えば小さい方だった。3年間の間に多少身長は伸びたものの、バスケ部ではセンターをつとめる選手と比べればその身長差は15センチ以上もの開きがある。

　ガレージから自転車を引いて、祖父から入学祝に貰った腕時計に目をやり、時間を確認した。ゆっくり漕いで行っても十分間に合う時間だ。

　一漕ぎすると、花も終わりの近い桜の匂いがした。

　学校に到着すると、校舎の前にはクラス分けの紙が貼り出されていて、その前には和也と同じく、今日入学式を迎える生徒達が集まっていた。

「えっと・・・」

和也も自分のクラスを見に行く。掲示板の前で自分の名前を探していると、誰かに肩を叩かれた。