渡来は練習が終わった後、カオルと二人で、ハンバーガー店で話し込んでいた。
「一年生のユニフォームを注文しなけりゃな」
「もう?今年は入部者が多いし、も少し待たない?」

カオルは今年の一年生も半分位辞めてしまうだろうと践んでいるのだ。だが、渡来は首を振る。

「もう二週間経ったんだ。ユニフォームは言わば、期待の証みたいなもんさ」

渡来は和也がバスケ部に残ってくれれば、他の部員も頑張れるんじゃないかと思った。
あんな小柄な選手がみんなの気持ちを引っ張っている。ここはキャプテンとしても、さらにみんなの気持ちを盛り上げる一発をかましたいところだ。

「了解。じゃ明日サイズを聞いておきます」
カオルは手帳にメモをとった。
ふと、顔を上げて渡来の顔をそっと窺い見る。渡来は目の前のウーロン茶のカップをガラガラと揺すっていた。

カオルは渡来に密かな恋心を抱いていた。だが渡来は今、バスケの事で頭がいっぱいだ。おまけに目指している大学も、難関校で、きっと恋愛どころではないだろう。

カオルは渡来と目が合いそうになり、慌てて下を向いた。