「じゃあ、勇助は何になりたいの?」
「あ?」
急に真剣に見つめる浅沼。
その目は少し涙目だった。
「なんでもねぇよ、俺は。」
レイアルハンターとしてこの世界に来て
使命を終えたらこの世界で過ごした記憶を
全部消すだけだ。
なんも残んねぇよ。
すると、浅沼は泣きだした。
「おっ!おい!!なんで泣くんだよ!!!」
浅沼は顔を伏せずっとしゃくり上げる。
「そんなに…俺に婚約者になってほしいのかよ…?」
冗談で聞いたわけじゃない。
だけど、ほんのちょびっとだけ心を許してしまった。
浅沼は大きく首を振る。
「ちがうっ…なんもなくないよ…勇助は…
勇助は…もっと特別な存在だよ…」
今日初めて会ったのに特別な存在かよ。
「ありがとう。」
俺は浅沼の頭を優しく撫でた。
こうしなきゃ心が痛いままだ。
まぎらわすため。
「俺でよかったら…
お前のなんにでもなってやるよ。」
そう、こんな言葉も出てちまった。
浅沼は顔を上げた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔。
でも、目は赤くも腫れてもなかった。
なら、いいや。そう思う俺。



