「そうか」

課長は、一言言って、高遠先輩を見て、あたしを見た。

「実はな、毎年やってる研修なんだがな、今年は、高遠と、加納君で行って来てもらいたいんだがな」

課長が、言った。

毎年やってる研修。

それは、地方の警察署に赴き、1日講義と武道を教えるのである。

年に1回、研修という名目で行くが、基本は1泊2日の旅行だった。

研修事態、そんなに長い時間やっていない。

夕方には終わる。

終われば、あたし達は用済みだから、自由時間になる。

帰る日は、公休になり、研修のレポートをまとめ、次の日に提出なのだ。

だから、帰る時間は自由なのだ。

それに、今回あたしが、選ばれたのだ。

高遠先輩は、何回か、行っていて、楽しんできてるらしい。

その話しが出た途端に、大山先輩が割り込んで来た。

「課長!タカは、去年も行ってるじゃないですか。俺が、代わりに行きます!」

去年は、高遠先輩と、鮎川さんだった。

お土産がひどくて、皆が文句を言った。

お土産を選ぶのも、結構大変なのだ。

ひそかに、課長も期待してるし。

「そんな事言ってもしょうがないだろ。決定した事なんだから」

「タカ!お前辞退しろよ!」

大山先輩が、粘っている。


あたしと、い、行きたいのかな……。


なぁんて、自惚れてみたりして。


「仁、お前は選ばれなかったんだ。黙ってろ」

今までの、低姿勢の高遠先輩は、どこにもいなかった。

「高遠翔平張り切って行ってまいります!」

敬礼をした。

「そうか、加納君も異存はないな?」

「はい(^O^)」

「では、この用紙に目を通しておいてくれ。くれぐれも、向こうの迷惑になるような事だけはやめてくれよ」

「今までオレがそんな事しました?」

「普段の行いが悪いから言っとるんだ。で?酒を飲まないわけにはいかなかった理由とやらを聞こうじゃないか?」


…………。


あたしは、とばっちりが来ないように、課長から渡された用紙をもらって、そそくさと自分のデスクに戻った。

墓穴を掘った高遠先輩は、課長からお説教をもらっていた。