ストロング・マン



たわいもない軽口を叩きあっていると、刺身の盛り合わせとだし巻き卵が運ばれてきた。
刺身の盛り合わせは盛り付けがすごく綺麗で、思わずわっという声が漏れた。エビの足にエビの卵がのせてあったり、しめ鯖は絶妙な包丁さばきで綺麗に丸まっていたり。


「ん、美味しい~!都内でこんなに鮮度が高いお魚食べたの初めてだ。」


「だろ?」


見た目だけでなく味も本当に最高だった。だし巻き卵は中に明太子が入っていて、口の中に入れた瞬間明太子の香りとだし汁がぶわっと出てきて、咀嚼するたびに口の中が幸せになった。

あーなんて美味しいんだろう。


「気に入ったみたいでよかったよ。」


嬉しそうにこちらを見る修也の言葉にはっとした。そういえば、ここのことよく知ってるみたいだし、ここってもしかして・・・


「ここって、元カノと来たとこだったりする?」


「はあ?何言ってんの、郁。」


私の発言が心底信じられないというような顔をして私にガンをつけてくる修也。だってさ、この間奈美と話してから私の頭の中は修也の元カノのことでいっぱいなのよ。それに今まで通ってたお見せなんて連れてこられたらそう思いたくもなるじゃない。

じっと見つめる私が譲らないことを悟った修也ははあとため息をついてから口を開いた。


「来てないよ。ここは会社の先輩とよく来てたとこなの。わかった?」


「・・・うん。」


「なんでそう不服そうなんだよ?」


修也の言葉に想像以上に安心している自分をばれたくなくてそっけない返事をすると、勘違いした修也がさらにガンをつけてきた。そんなに睨まなくたっていいじゃない。イケメンが睨むのは迫力あるの、分かってんのかな。


「不服じゃないでーす。ビールお替わりください!」


「お前、話すり替えんな!」


「変えてないよー。」