ストロング・マン



適当にショッピングして、ご飯を食べて、今日のデートはおしまい。
今は私の家まで送ってくれているところだ。
尚と私の家の方向は真逆なのに、毎回きちんと家まで送ってくれるなんて、尚は本当に優しい。

しかし残念なところがまた一つ、尚は運転が少し下手。

アクセルを一定間隔で踏んでいられない人っていうと伝わるかな?
まっすぐな道を走っていても、アクセルを小刻みに踏みこむためにブォン、ブォンとスピードが上がったり下がったり。
指摘しようと何度思ったか分からないけれど、言ったら傷つくかなって思って言えずじまい。

自分はあっさりした恋愛スタイルとしながらも、悪いところ一つ指摘できないってどういうこと?って自分でも思うけど、肝心なところは意気地なしなのは私のダメなところ。




「今日もありがとう。じゃあまた週末会えたらね。」


「あ、郁。」


ドアを開けようとした手と反対側の手の肘あたりをぐいと引っ張られ、尚の方を振り向くと触れるだけの優しいキスが降りてきた。

まったくもう、尚ってば。

またね、再びそう言って、笑って出ようとすると、いつもは笑って見送ってくれるのに今日はさっき掴まれた手にまた力が入った。

「ん?どうしたの?」

こんなこといつもはなくて、困った顔で見てみれば、いつもの楽しそうな顔が泣きそうな、辛そうな顔をしていた。


「・・・なんでもない。おやすみ。」





その日は尚の珍しい顔が頭から離れなかった。