目を覚ますと、買ったばかりのお気に入りの時計の針は午前八時をさしていた。

二階の部屋の窓から見える景色は、大きな桜の木がある見に覚えのない小さな公園。

僕には具体的な夢はなかったが、ただ「自分」から逃げ出したくて、両親に適当な理由をつけ、進学のためこの街に越してきたのだ。







僕の夢は、いつの日からかない。

頭の中は、自分の存在を証明するのにいつもいっぱいだからだ。

なぜ、この世に生まれたのか。

なぜ、神様は僕を創ったのか。


考えるだけ意味がないことぐらいは知っている。
でもふとした瞬間、頭の中は無意識に感じてしまっている。






―同性愛。






「きっとすぐに普通に戻るから」


悩んだってしょうがない。
そう自分に言い聞かせる度、僕の目の前の世界は見事に霞んで見えた。




越してきた新しいこの部屋で、はじめて僕は声を押し殺して泣けるだけ泣いた。