入ってきたのは、昨日莉沙にぶつかって教科書やらプリントをばら撒かせた張本人・・・侑だった。

侑は莉沙の存在に気づくとにこりと笑い、手をひらひらと振ってきた。


莉沙は戸惑いながらも手を遠慮がちに振り替えした。

侑は自分の席に荷物を置く(どうやら、教卓の目の前という最悪のポジションらしい)

すると、莉沙の席まで近寄ってきた。




「おはようー。昨日はごめんね、ぶつかっちゃって・・・」

「あ・・大丈夫だから」

「うーん、でも大変だったでしょ?あの量は」

「いやーいっぱい持ってた私も悪かったし・・・」




昨日ぶつかって初対面だったのにもかかわらず、フレンドリーに話してくる侑に莉沙は少し戸惑いを覚えた。


もともと、男の子には自分から話しに行かないし、特別可愛い訳でもないので男の子からくることも無い。


それに加えて、昨日のやり取りから侑は大輔と友達であることが容易に想像できた。

侑も、莉沙と翔の関係を知っているのではないか。大輔みたいに何かを企んでいるのではないだろうかと疑心暗鬼になっている。



「あ・・・ねぇ、そういえば名前なんていうの?昨日自己紹介とか無かったから分からなくって」

「村野莉沙です・・・」

「莉沙ちゃんかー。俺は斎藤侑。侑って呼んでねー」

「ゆうくん・・・」



それから、侑はぺらぺらといろいろなことを話していった。

部活のこと、勉強のこと、学校のこと・・・話がいろいろなところに飛ぶからたまに分からなくなったけど。

莉沙はそれに相槌をうちながら、たまに侑からされる質問に答えたりしていた。



「莉沙ーおはよ。」



話してしばらくしてると愛美も登校してきた。


「あ、愛美」

「珍しいねー莉沙が男の子と喋ってるの」

「あーうん・・」


莉沙は少し困ったような笑みを浮かべた。