翔くんは初めての彼氏だった。
高校に入って、同じクラスで、たまたま仲良くなって告白された。
「付き合う」ということに憧れを抱いていた私は、誰かに好きといわれたことが嬉しくてすぐに返事をしてしまった。
もしも、このときにもっと冷静に考えて
付き合うことを止めていたら
私の価値観は大きく違っていたのかな・・・・・・?
彼との付き合いは、「楽しい」とか「幸せ」だとか、そんなポジティブな言葉で表せるようなものではなかった。
-彼の企み-
あの後、愛美に何があったのかを説明して一緒に帰った。
愛美は「ごめんね。早く帰ってこないで」と謝ってくれた。愛美は悪いこと何もしていないのに。
愛美は過去に莉沙に何があったかをすべて知っている。
どうして莉沙がそこまで怯えたのかという理由を。だから、深いところまでは追求しないで黙って一緒に居てくれた。
新学期2日目
それなのにもかかわらず、莉沙の心は晴れなかった。
(昨日の人・・・会いたくないなぁ。)
そんなことを考えながら廊下をゆっくり歩く。けれど歩いていればいつかは教室についてしまうもので。
入り口の前について、はぁとため息を漏らし莉沙は教室に入った。
横開きのドアが開かれ、カラカラと小さな音を立てる。その音に、教室の中に居た数名のクラスメイトが莉沙の方を向いた。
しかし、特別親しいわけでもないので挨拶をする訳でもなく、姿を確認したらすぐに視線を戻した。
教室には、まだ2~3名しか登校していない様子だった。
(良かった。あの人は居ないみたい。)
莉沙はほっとため息をついて自分の席へと向かう。
その時、また、教室の扉が開く音が大きく響いた。
