心臓が壊れてしまいそうだった。


動悸と蘇る記憶が、私を壊そうとする。


キスをされそうになったくらい、と一般的に見たら大袈裟かもしれない。


だけど――




「はぁはぁ……」


「莉沙ー!」



教室から駆け出した莉沙はしばらく走るとその場で座り込んでしまった。

震える体を両手で抱きしめ、必死に何かから耐えようとしている。



莉沙を追いかけている、愛美の声が少し遠くから聞こえる。



「居たっ!大丈夫……」

「うん……ごめんね心配させて」



愛美には心配させまいと、必死に笑顔を作る。

そんな彼女の様子に愛美は悲しそうに眉を下げる。



「莉沙……無理しないで」




そっと肩に添えられた手が暖かくて、堪えてきたものが溢れ出そうになる。




――忘れられたと、もう大丈夫だって思っていたのに……


あの人に付けられた傷痕は、予想以上に深い。




男の子に触れられそうになっただけで


嫌悪よりも恐怖を感じてしまう私は……



もうずっと恋なんて出来そうにない