斜め前の君




「――っえ、は……や、やだ!!」



涙で潤んだ目を強く閉じて、少しでも離れようと大輔の体を押す。


表情は、体は、やっぱり恐怖で怯えているようだった。


力の入らない、震える腕で押したって痛くも痒くもなくて


そんな莉沙の痛々しい様子に大輔はまた、悲しそうな表情を浮かべる。

莉沙にはけっしてそんな表情を悟られないように、静かに、そっと。




(この怯えようは……)



大輔が心の中で考え事をしていると、腕の中から弱々しい声が聞こえた




「放してよ……」


「ケチー」




大輔はあっさりと、莉沙の体を放した。表面上はお茶らけた感じで


安堵した様子の莉沙を見て、大輔は無意識に口を開いていた。












「……翔以外の男に触れられるのは、そんなに嫌?」












その声は、少しの怒りを含んでいるように聞こえた。