はぁ、と胸を撫で下ろす。
ぶっちゃけ、この時期の凌兄は機嫌が悪い。しかもいまは、なぜか凌兄とは気まずいし、出来れば、凌兄とは極力話したくないのが本音だ。
「人の部屋の前で何してんだよ?」
びくーっ!
勢いよく後ろを振り返ると、凌兄が立っていた。
「い…いや、あの、なんていいますか…」
しどろもどろにしゃべるあたしを、凌兄は興味もなさげに自分の部屋に入っていく。
ちょ、ちょっとぉ…!
あたしもゆっくり、ゆっくり、凌兄の後を追い掛け中へ入った。
「あ、あのさ?凌兄…」
勉強しだす、凌兄に恐る恐る声をかけた。
「なんだ?」
「…あの…これ!」
ずいっ、と押し付けるようにチョコを渡した。

