「でもねっ!」
栞は一歩も引かない。
どうしてそこまで言うのだろうか。
しかし、勇紀はそんな栞の姿に、若干イライラを募らせる。
「だからってどうなんだよ?」
冷たい一言。
栞はふっと言葉をつまらせる。
「雛が切なそうな顔してるの嫌だ…」
「だからってどうすんだよ?雛に、譲りでもするのかよ?」
恐がらせないわけじゃない。
しかし、低い声にどうしてもなってしまう…。
勇紀の心境は複雑だった。
栞も凌兄が好きだったから、凌兄に譲ったのだ。
だからそんな不安で居られては、困るのだ。
……勝手かもしんねぇけど、仕方ねぇじゃん。
こんな顔を、見たいわけじゃない……。
冬兎も、口には出せないでいたが、勇紀と同じ想いだ。
栞には、いつも笑顔で居て欲しい…。

