でも、意地悪だけ。
優しくはしない。
それが俺の気持ちを抑える唯一の箍だったんだ。
優しくしたら、溢れそうで。
ただでさえ溢れそうな気持ちが零れだしてしまいそうで。
せっかく取り戻せたこの位置を、壊すことが恐かった。
この気持ちが報われることはない。
俺たちが兄弟というものになったときから。
なら、せめてこの位置だけは失いたくなかった。
そんな俺に、神様なのか…。
思ってもみない言葉が言い放たれた。
その日は栞の17歳の誕生日だった。
毎年全員の誕生日にする、恒例の家族パーティで。
親父は前触れもなく、
いきなり…
『この3人は……、お前の婚約者だッ!』
……そう言った。

