でも俺は冬兎のこともいつも、羨ましがっていた。
冬兎は優しいのはもちろん、栞になんでも素直に気持ちを伝えてる。
婚約者だと言われた日、母さんが、栞じゃ嫌?って俺ら3人に聞いてきた時…
凌兄と俺が曖昧な答えを言うのに、
冬兎は
「別にいいよ。僕、栞のこと嫌いじゃないから」
そう言った。
好きだ、とは言わなかったけど…。
でも羨ましかった。
――「俺、ヤダ」
――「だってこいつ、料理出来ねぇじゃん!俺、飢え死にしたくない!」
言ってる最中自分で、何言ってんだ俺!って思ってた。
本当は嫌なんかじゃない。
めちゃくちゃ嬉しい。
もし、まずいめしでも文句言うかもだけど、残さず全部食べてやる。
そう思ってんのに、
いつだって俺は、肝心なとこで、大事なとこで、素直になれないんだ…。
……馬鹿だよな、俺。

