最近、食欲がない。
お腹はある程度空くのだけど、いざ目の前にすると、なぜだか食が進まない。
はあ、とため息をつきながら箸を置き、ごちそうさま。と言って、顔をあげれば。
…みんなの、化け物でもみたような顔が並んでいた。
「…も、もう食べねぇのか…?」
勇紀が震えながら指差すあたしのお皿には、コロッケが4分の3は残っている。
「うん。勇紀、食べていいよ。好きでしょ?」
「…お、おう?」と、勇紀はあたしが渡した皿を、訳がわからないまま受け取っていた。
「し、栞…大丈夫か?お前もコロッケ、好きじゃなかったか…!?」
次に聞いて来たのは、お父さん。
「うん…。でも今日はいいや、食欲ない」
「…そ、そうか…」
本当に、なんだろうか。
コロッケ、好きなのにな。
自分でもよくわからないが、食欲が出なくて、その変わりにはあ…とため息が零れる。

