「凌兄、おかえり!」
花嫁修行、つまり夕飯を作らない日は、いつもこうやって凌兄の帰りをお出迎えをする。
「ああ、ただいま」
あたしの頭を撫でて、笑いかける。
スーツ姿の凌兄は、来ないだまで大学生だったのに、違和感なく似合っている。
社内でも、きっとモテてるんだろうなぁって思う。
…そして、それを想像しただけで落ち込む。
鞄を受け取っても、なかなか中に入ろうとしないあたしに、首を傾げる凌兄。
「…どうした?」
……ただの嫉妬だと、わかっているのだけど。
「凌兄の背が、縮んじゃえばいいのに…」
「はあ?」
そしたら、今よりモテなくなるかもしれない。
「それか、もっとその性格の悪さを全面に押し出してよ!」
そしたら、きっと見かけに騙されて近寄る人も、離れてくのに…。

