「雪月、風鈴の座敷に飾ってあった、ものを覚えているか?」







「風鈴でありんすか。」







「そうだ。」






凪雛は、懐から風呂敷を取り出し、広げた。






「これ・・・」







風鈴の座敷に飾ってあった、風鈴だった。大切な、母親からもらったものだと。








しかし、美しい風鈴の面影は何処にもなく壊されていた。







「捨てられていた。・・・ちょっと、ここを見てごらん。」







破片を見ると、そこには見慣れた文字が書かれていた。







「先秦倶・・・」








「風鈴の母親も、先秦倶の遊女だった。」








「雪月、オマエは今まで先秦倶と聞くだけで、顔がこわばっていた。気づいているか?風鈴は、オマエにずっと笑っていて欲しい、とこの風鈴を壊した。」