雪月の声は、震えから怒りへと変わった。






「いいかい、雪月覚えておきな。遊女っていうのは、他人に靡かず、物に靡かず、男に靡かずが誇りだ。わっちもそれを誇りにやってきた。でなきゃ、遊女になんか。花魁になんか・・・」






「そんなもん、なれなくったていい!!」






雪月は涙ながらに叫んだ。







「そんなに、誇りが大事なのか!?」






風鈴は立ち上がって、雪月を見下ろした。






そして、凛とした瞳、意思のある口調で言った。






「誇りなんかより、あんなものより・・・大切なものがある。」







「女将さんと凪雛姐さんに・・・頼んだよ。」







それだけ言うと、風鈴は座敷を出て行った。






そこには、一通の文と桃色の霞草が置いてあった。







文は、凪雛あて。






霞草は、女将あてだった。






雪月は拳を握りしめ、唇をかみしめた。