「シャナ、もう少しだから頑張れよッ!」



一方的に言って、不思議そうに首を傾げるシャナを無視してアルは前を向いた。



「照れてるんだ、察してあげてよ姉さん。」



ラスがこれ見よがしに言うのがまた殊更恥ずかしく、憎々しかった。





…そしてその報復は勿論した。



シャナが黙々と歩いているのを確認したアルは素早くシャナの死角に潜り込み、ラスを羽交い絞めにしたのだ。



「よくもからかってくれたな、ラス。」


「あ痛たたた、義兄さん、よしてよ。」


「まだなってないが義弟よ、止めないよ。」



かくしてラスは道の端に転がされ、ジタバタもがいて起き上がる羽目になった次第だ。






「着いたぁ…。」



馬場に着いたシャナはもうアルにもたれていないとよろけてしまいそうだった。



立つだけでこれほど体力がいるなんて、とシャナはぼうっとしている意識の中で思った。