今日の・・・

8月20日
 
 毎日暑くて嫌になる。お盆は実家に帰り、ご先祖様にもおばあちゃんにもきちんと挨拶をしてきた。15日の晩、おばあちゃんが夢枕に立って、しっかりせぇよ、と言われた。しっかりせぇって言われても・・・とも思ったけど。
 それはともかく、今日は日曜日で、高校時代の同級生で先月子供を産んだ佐智子の家にお祝いに行った。同じく同級生だった、茜と理恵が一緒だった。私たちがそれぞれ短大や大学に進んで学生生活を楽しんでいる頃、佐智子は、20歳で結婚し、21歳になったこの夏、第一子になる女の子を産んだばかり。この年で母になるなんて、私には想像もできないし、すごいな、と思う。

 茜が車を出してくれて、大阪北部にある佐智子の家に着いたのは昼過ぎだった。大阪とは言えかなりの田舎で、山の間の集落に佐智子の家はあった。古い、大きな家で、庭も広い。
 
「道、迷わなかった?」
出産後にややふくよかになった佐智子が、菓子とコーヒーを並べながら言った。
「ううん、大丈夫」
茜が答える。
 私たちが通された十畳程の広い和室からは広い庭が見渡せ、洗濯物が揺らめいている。蝉の声がうるさいほどに響いている。部屋の隅にはベビーベッドが置かれ、その中に赤ちゃんが眠っていた。私たちは可愛い可愛いの連発で、でも、なんだか怖くて触れなかった。
 庭に続く縁側には大きな黒い犬がゴロンと横になっていたが、私はどう言うわけかその犬が気になった。
「大きな犬がいるねんね」
私が聞くと、
「そやねん。クロって言って雑種やけどね、私がお嫁に来てすぐに迷い込んできたねん。怪我はしてるし、汚いしでどうしようかと思ったんやけど、かわいそうでね・・・。こんな田舎の広い家じゃ、家族の誰も反対しなかったし、一緒に嫁入りよ」
佐智子は笑いながら言った。