6月14日

今日は講義も午前中ですべて終わったので、同じ文学部の森下君と映画を見に行った。ちなみに森下君に片思い中・・・。180センチを越える長身で、そのわりに穏やかな性格。普段から寒気ばかり感じるとこの多い私にとって、とても暖かな感覚を与えてくれる、珍しい人である。オレンジに近い、黄色のオーラが周りに漂っているような感じ。
私も映画好きと言うことを知っていて、ちょくちょく一緒に出かけるのだが、今回も
「行くよ!」
と浮かれトンチキになって言ったものの、まさかジャパニーズホラーを選択していたとは・・・!  映画という作り物とわかっている分、本物に比べれば・・・と思うのだけど、稀に寄ってくる場合もあったりして・・・・。でも、ここは惚れた弱み、何もないない、とちょっとした嫌な予感を無視して出かけたのだった。まだ友達だけど、こんな風に二人で映画なんて周りからはカップルに見えるかな、なんて・・・。

 土曜日の割には館内は空いていた。自分たちを含めても観客は10人に満たないようだ。ま、内容が内容だから。
「そう言えば、あっちゃんとホラーって初めてやったっけ?」
私の右側に座っている森下君が小声で言った。
「そうやねぇ・・・」
「もしかして、嫌いなんちゃうん?」
「ううん、そんなことないよ。何でも見るし」

まだ、森下君には力のことは言ってなかった。気持ち悪いと思われても嫌だし。でも、本当は言いたい。こんなことでもきっかけになって仲が進展するかもしれないし・・・。
 
 映画はと言うと、轢き逃げに遭った女性の霊が犯人に関わる周りの人間すべてに復讐していくというものだった。幽霊はやっぱり女の方が絵的に怖いようだ。
 やがて照明が消え、本編がスタートした。
「何もありませんように」
心の中でつぶやいて、視線をスクリーンに集中させる。
 しかし、し・か・し。始まって30分ほど経ったころ、背中に異様な寒気を感じた。嫌やな、と思ったが、無視していると、森下君側の通路を何かが下へ降りていくのが見えた。