今日の・・・

「何？」
佐智子が心配そうな顔をして言った。
「えっと・・・」
私が口を開きかけた時、縁側のクロがもう一度大きな声で吠えた。佐智子の腕で再びうとうとしかけていた詩織ちゃんがまた泣き出してしまった。
「まただ・・・。最近、クロの無駄吠えが多くて・・・・。一日何度もこうやって起こされるねん。どうにかしないとって思ってるんやけど・・・。」
「あかん、あかん、クロは・・・」
私は自分の鞄からいつも持っている白の数珠を取り出し、もう一度縁側に戻ると、クロの隣に立って手を合わせた。
「クロ、もう大丈夫だよ」
クロに話しかけると、ちらりと私の方を見上げ、またその場に寝転がった。
「信用できないか・・・」
私はふうっとため息をつき、クロの頭をさらっと一撫ですると部屋に戻った。
「なになに、何なの？」
皆が一斉に声をかけてきた。
「多分、この辺りって、昔から畑が多かったんやと思うわ。な？」
佐智子に問いかけた。
「うん、そうらしい。昔からの農家が多くて、今でこそ兼業が増えたけど、それでもご近所みんな土地持ち」
「やろ？それからこの辺、池、多ない？」
「あぁ、結構多いかも・・・。農業用なのかな、それでもだいぶ埋め立てられたようだけど・・・」
「かなりの数の狸とか狐とか小さい動物がいるねん、この周り」
「えぇ？！」
「畑で悪さして捕まって、そこらの池に放り込まれたりしてたんちゃうかなぁ」
「うげぇ・・・」
茜が変な声を上げて、身震いした。
「聞いたことあるよ・・・。義妹から」
「あと子供がね・・・」
「あ、１０年くらい前に落ちて亡くなった子がいるって！！お義母さんが言ってた！
詩織にも絶対近づかすなって、まだ生まれる前から言われたよ」