「わかってないなぁ。キミって意外と頭悪いんだね。」

…ほんっと、この人って人をムカつかせる天才ですか!

「すいませんね、バカで。そんなバカに彼女役なんて務まらないんじゃないですか?」

「いや、それとこれとは別の話しだよ。別にバカだと言ったわけじゃない。」

うざいーっっ!!!

「僕に好意を持った人じゃ、彼女のふりなんて出来ないだろ?本気で惚れられたら困るんだ。その点、キミなら問題ない。ふりと言うからには、何もしないし。バイト的な感覚でやってくれればいいんだ。何なら時給も払うけど。」

「いりません。」

「キミはそう言うと思ってた。だから、キミが望むことを色々考えてみたんだけどね、何も思い浮かばないんだよね。だから何でも言ってくれれば、望みを叶えるよ。お願いだ、キミ以上に完璧な相手はいないんだよ。」

真剣にお願いする彼を見て、なんだか自分が悪者のように思えてしまうのが嫌だ。

「あぁもうっ!わかったわよ。でもこの借りは大きいですからねっ!」

あたしの言葉に、忍成が笑顔になった。

今まで誰の前でも見せたことがないような、とびっきりの笑顔。

悔しいけど、少しドキッとしたぐらい。


こうしてあたしは、航輝と別れた次の日に、忍成の彼女になってしまった。


やつは何とか出来るって言ったけど、さすがのあたしでも、これからの女子社員の嫉妬が怖いよ…