「それとコレ」
言葉と共に
差し出されたのは
綺麗にラッピング
された...
マフィン?
『何コレ』
「新作マフィン」
いやマフィンは
見れば分かるん
ですが
なんであたしに
コレをくれるのかっ
て聞いてるんです
「今朝作ったんだよ
俺が考えた
新作苺マフィン.
甘いけど
カロリー低め.
女の子向けだから
試食してみて?」
あぁだからか
綺麗に巻かれた
赤いリボンをほどき
手に取ったマフィン
お菓子屋さんで
売られてても
おかしくないほど
見た目は完璧だ
『いただきます』
1口食べれば
広がる甘い味
「お口に合いますで
しょうか?」
『...悔しいけど
美味しい』
そぅ呟いたあたしに
隼人は笑って
良かったと言った
本当
見た目も味も
パーフェクト
だから悔しい
あたしも一応
女の子だから
甘い物には弱いわけで
さっきまで
あったはずの
マフィンは
いつのに間にか
口の中に消えていた
『コレ売るの?』
「まさか」
鼻で笑う隼人だけど
その表情は
まるで消えていく
花火のよぅに
切ない
コレなら
たくさんお客さん
来そうなのに...
手作りです
なんて物には
比べられないくらい
本当に
美味しいんだから

