あっという間に
食べ終わった
あたしの前に
置かれた最後の
デザート
チョコレートケーキに
フォークを入れ
口に運べば広がる
苦みと甘み
本当最高
さっきまで
泣いてたなんて
すっかり忘れた
あたしは
次々に出てくる
素晴らしい料理に
自然と顔が
綻んでいた
「良かった」
『ん?』
ケーキを頬張りながら
返事をしたから
フォークが口に
入ったままだ
「紗羅ちゃんが
笑ってくれて」
その言葉が
更にあたしに
微笑みをくれる
隼人のおかげだよ
さっきまでの
暗い気持ち
全部吹っ飛んだ
本当はそんなこと
言いたいんだけど
強情なあたしの
口は素直な言葉を
嫌うから
飲み込んだケーキに
変えて
自分が出来る
最高の笑顔で
『ありがとう』
とだけ言った

