『はい』
思った以上に
高い自分の声に
一瞬焦った
「あ.紗罹ちゃん?
おはよ」
こんな時間から
うるさいくらい
でかい声が
耳に響く
『なんか用?』
「いんや?
なんとなく紗罹ちゃん
と話たいと思って」
なんとなくで
この時間なんだ
今日はあたし
起きてたから
良かったけど
もし寝てたら
きっとキレてると
思う
貴重な睡眠時間を
邪魔するなってね
『あっそ.
てか仕込みは?』
この時間じゃぁ
まだ忙しいんじゃ
ないんだろぅか
話たいとか
呑気なこと言ってて
良いのか
「ん?今平気
調度キッシュ焼いてて
暇なんだ」
『そぅ』
その言葉に
少し安心
邪魔しちゃうのは
悪いもん
「ってか紗罹ちゃん
もしかして
寝てない?」
『え?』
「いや声がいつもより
眠そうだから」
ばれるとは
思わなかった
声だけなのに
よく分かるな
『あ~まぁね』
「なんで?」
『なんとなく』
「お肌に悪いよ~」
『うっさい』
確かに肌には
悪いんだけど
寝れなかったんだから
仕方ないでしょ
なんて言うはずもなく
電話の向こうから
オーブンの音が
聞こえた

