「良かったな
見つかって」
『うん』
2人並んで
海の家に帰ろうと
足を進める
足元の砂は暑く
ビーチサンダルを
履いていても
意味をもたないくらい
足に纏わり付いて
歩きにくい
ゆっくり進んでいる
あたしに
自然に歩調を
合わせてくれる隼人
『あ...』
「あ?」
ふと人混みの中に
見知った顔を
見つけた気がした
正確には
見知ったと言っても
何年も見ていない顔
お父さん...?
遠目だから
はっきりはしない
ものの
自分の父親だ
見間違いでは
ないと思う
その隣に
寄り添うよぅに
肩を並べるのは
知らない
女の人
後ろ姿だが
まだ若いのは
分かった
「どぅかした?」
『え?あ...』
歩みを止めた
あたしを
不思議そぅに
覗き込む隼人
おかげで
飛んでた意識が
戻ってきた
『なんでもない』
見なかった
ことにしよぅ
うん
人違いだ
無理矢理
そぅ思い込んで
あたしは
歩き出した
追うよぅについて
くる隼人は
まだきっと
不思議そぅな顔を
してるんだろぅ
それでも
何も聞いてこない
その優しさに
今は甘えて
あたしは何も
話そぅとしなかった

