クローゼット

「私?私にはね、引き出しがあるんだ」
「…引き出し?」

それは意外な答えだった。

「そう、そこを開けると私を辛い現実から救ってくれるものが入っているの。だから落ち込んだ時はその引き出しを開ければ大丈夫なんだ」
「なにそれ!いいな~!私もその引き出し欲しいよ」
「美咲にも早く出来るといいね、引き出し。私も若い頃はそんなのなかったから苦しかったよ」

ナオはうらやましがる私に続けて言った。
「ほーんと、美咲はやっかいな性格してるよね。でもさ、それが美咲なんだから一生付き合ってかなきゃならないんだよね」
「んだねぇ。苦しいなぁ」
「でも私は美咲の性格好きだよ。色んな事考えて頭悩ませて、若いのに珍しいよ。というか興味があるな。どういう事考えてるのかなぁとか気になるんだよね」
「…そうなの?へへ、なんか嬉しい。ありがとう」

私は本当に嬉しかった。ナオがそんな風に自分に興味を持ってくれているなんて。
自分に興味を持ってもらえない程さみしいことはない。他の人はどうかわからないけど、私にとってはすごく辛いことだ。