だけど、私にとってナオだけは違った。

「美咲のことはなんとなくわかるの。離れててもね」

前にそう言われたことがある。不思議だなぁと思いつつも私は嬉しかった。
私は他人に自分の内面を理解してもらいたい、という気持ちが人一倍強い方だと思う。それなのに自分の気持ちをうまく表現出来ないというやっかいな性格だった。
この性格で思春期の頃から今に至るまで随分と苦しんだものだ。
たとえどんなに悲しい気持ちがあったとしても、それを言葉に出来なければ相手には伝わらない。

時には自分の胸をナイフで切り裂いて、「私の心は今こんな状態なんだ!」って見せる事が出来たならどんなに楽だろうなんて考えることもあった。

だからナオみたいに、私の少ない言葉からも多くを理解してくれる人は私にとって貴重な存在だった。


頬杖をついて窓を見た。
綺麗な夕焼けだ。もう少しで仕事も終わる。
今日はナオに会いに行こうかな。