葬儀から更に3日が経ち、バタバタした日々もようやく落ち着きを取り戻してきた。






―ガチャッ






「ただいまぁ…」





誰も居ないと分かっているのに、家のドアを開ける時には必ず呟いてしまうこの言葉。



静まり返る部屋が、私の胸を締め付ける。






仏壇の前に座り込み「パパ、今日ね」と一日の出来事を報告する。



いつもは一緒にご飯を食べながらしていた恒例行事。

教師だったパパは、いつも教え子さん達の話なんかして。



ママは居なくても、いつもこの家には笑いが絶えなかった。






だけどもう、パパからは何の言葉も返ってこない。








―ピンポーン






しばらくそうしていると、インターホンが鳴った。



隣のおばちゃんかな?





チェーンロックを外し、ドアを開けるとそこには…






「あんた、有栖川美波(アリスガワ ミナミ)?」






…真っ赤な頭の若い男。多分、私と同い年位。


少し長めのその髪は所々に金と黒でメッシュが入っていて、左サイドの髪は後ろに向かって編み上げられている。



…一言で言えば、チャラそう、そして怖そう。

でも顔立ちは物凄く整っていて…背も高く、めちゃくちゃカッコいい。




…こんな人がうちに何の用だろう…。



不信に思いつつもコクンと頷くと、


「親父さんに線香あげに来た。ちょっと上がるぞ。」



男も頷いて、靴を脱ぎ始めた。