気づけば外はもう真っ暗で、時計の時刻は夜9時を回っていた。

どうやらあたしは、あれからまた眠っちゃったみたい。

登坂さんはスーツのポケットから車の鍵を取り出して、あたしの前で軽く振った。

チャリン、といい音が鳴る。


「遅くなって悪かったな、長澤。立てるか? ふらつくなら支えるから言えよ?」

「あ、はい」


そうして、あたしは促されるままにベッドを降りた。

点滴が効いて立ち上がってもふらつくことはなく、それを見ると、登坂さんはかすかに笑った。


「煙草臭いけど我慢な」

「はい、大丈夫です」





それから30分くらい・・・・。

登坂さんに部屋まで送ってもらったあたしは玄関の鍵を開けた。

借り物の部屋だけど、中に入ればとたんに“帰ってきた”という嬉しさが込み上げる。

・・・・なんだか不思議。


「じゃあ、俺はこれから事務所に戻るから。5日間は休むこと。いいな、長澤」

「はい」


あたしが部屋に入るのを見届けたあと、登坂さんはまた車を走らせてスーパーへ向かった。