そんなあたしの不安が分かったのか、登坂さんは合点がいったように目を見開いた。そして・・・・。
「ちょっと待ってて。店長に話して俺も帰らせてもらう」
そう言うより早く、席を立って店長のほうへ行ってしまった。
「・・・・」
・・・・え?
送ってくれる、ってこと?
どうしよう、どうしよう・・・・。
どうしよう、あたし───・・。
「おい、長澤、まだ上着も着てなかったのか? 店長に言ったからもう帰るぞ」
「・・・・あ、すみません。今・・・・」
結局、数秒で戻ってきた登坂さんにそう言われてしまったあたし。
“申し訳ないので・・・・”と断るタイミングも完全に逃してしまって、急かされるままに店を出ることになった。
それからのあたしの記憶は、ビールと緊張でほとんどなく・・・・。
何を話したのか、どこを通って帰ったのか、全く覚えていない。
ただ・・・・。
ただ、登坂さんの隣は居心地がよくて、温かい気持ちが胸の中にほんのり残った───・・。


