登坂さんには一番にお礼を言おうと思っていて、乾杯のすぐあとにそう言った。

でも、登坂さんはこの調子。

ニコリともクスリともしない顔でぶっきらぼうに返された。


「いえ。登坂さんの指導のおかげです。まだまだ半人前ですけど、なんとか仕事ができているのは本当に登坂さんのおかげなんです」

「そうか。それならまぁ・・・・よかった。でも気合い入れすぎて空回りするなよ」

「はい」


少しずつ・・・・ほんの少しずつだけど、登坂さんのことが分かってきたあたし。

言葉数は少ないけど、けして冷たい人ではないことがこの1ヶ月で身に染みた。


心配したり気にかけてくれたり、仕事中もこういう席でもさり気なく励ます言葉をかけてくれる。

それがどんなに力になるか・・・・。

あたしはもう、怖がったりビクビクしなくなったんだ。


「お〜い、長澤ちゃ〜ん、ビールついでちょうだ〜い」

「あ、はい!」


もう酔った店長がお酌を頼む。


「店長、酒癖悪いから」


すると、登坂さんはすかさず耳打ちで教えてくれる。