「泣かされて嬉しいなんて、やっぱり長澤は変わってるな」
「そんなこと・・・・!今だからそう思うだけで、コーヒーをごちそうにならなかったら嫌いになっていたかもしれませんし」
「なんだ、餌付けで長澤を落としてたのか? やってみるもんだ」
今までの切ない表情が嘘のように登坂さんは楽しそうに笑う。
きっとここは、あたしは怒る場面・・・・だと思うけど、なんだか貴重で怒る気が全然起きない。
泣かされて嬉しくて、からかわれて嬉しくて・・・・登坂さんが言う通りあたしは変わっているのかも。
「ごめん、ごめん。予想以上の返事だったからおかしくてな」
「はは・・・・」
これも喜んでいいのかな。
でも、またすぐに切ない表情に戻った登坂さんは、続けて言う。
「麻紀のことはそうして吹っ切れたけど、別れ方はまだ・・・・な。モッサの影がちらついて、梅村が現われても、なかなか気持ちが固まらなかった」
あたしも、きっと同じ。
想いを伝えてつき合っても、未来に苦しめるなら・・・・今の関係を続けるほうを選択してしまう。


