やっと、フェアじゃないからとモッサが教えてくれた“トラウマ”の根っこが見えた。
長澤は「振られてから二股に気づくなんてバカですよね」とニコニコしながら言うが・・・・。
俺はそうは思わなかった。
「だから、また誰かを好きになるのが怖かったんです。同じように“重い”って思われるくらいなら恋なんてしたくなかった」
「そう」
俺も同じだった。
また誰かを好きになっても、同じことの繰り返しな気がして。
「でも、いつの間にか登坂さんを目で追うようになって。好きだなって思ったときには、今度は綾ちゃんが登坂さんを好きで」
「・・・・あぁ、あの頃か」
「夏は大変でした」
「確かに」
「綾ちゃんが登坂さんに夢中なだけ、あたしはやきもちばっかり」
俺だってそうだ。
長澤がモッサと楽しそうに話すのを見るだけで辛かった。
敵意むき出しで、ガキみたいに突っかかって・・・・モッサには悪いことをしてばかりだった。
「無理やり合コンにも参加させられちゃいましたし。本当、綾ちゃんにはかないません」


