途中まで出かかっていた涙と鼻水を体に引っ込め、俺も麻紀に背中を向けて歩きだす。

ふと見上げた夜空は、いつになくキラキラと星が輝いていた。


いつか、またどこかで会えたら。

今度はお互い、自分の好きな相手の話でもして一緒に笑い合おう。


そのときまで、さよなら、麻紀。

もう会うことはないかもしれないけれど、そのときまで───・・。















「・・・・さて。帰るか」


乗り込んだ車は、あの夏の日、てっきり長澤は俺の車に乗ると思い込んで深夜のコンビニに買いに走った芳香剤が置かれたまま。

それを手に取り鼻を近づけると、まだかすかに石鹸の香りがした。

長澤によく似合う、清潔で優しいシャボンの香りだ。


そうだ。

この香りが消えてしまう前に、長澤に会いに行こう。

そして、どんなに俺が長澤を好きか、もう一度伝えよう。


不思議と、長澤は俺を待ってくれている気がした。

はやる気持ちをアクセルに込め、俺は走りだす。

大切な人のもとへ・・・・。