「でも、さすがにできなかった。麻紀はもう新しい恋をしていて、いくら俺がプロポーズしたって無理だと思った」
「・・・・」
「麻紀は頑固だからな。そんな状況で何を言われても、決心は鈍らなかったと思う」
やっと驚きが飲み込めたらしい麻紀は、数度瞬きをしてから言う。
「“頑固”は余計でしょ。でも、あとは誠治の言う通り。ろくでなしな男だったけどね」
そして、茶目っ気たっぷりに舌をペロッと出した。
あの最低な彼氏にも、俺にも・・・・両方に言っているように思えて、2人分肩身が狭い。
すると、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、麻紀は急に楽しそうな表情を浮かべる。
「そっかぁ。私、婚期逃してたんだね〜。そっかそっか。ふ〜ん」
いや、これは確信犯だ。
このからかうような物言い、目、態度・・・・間違いない。
「なんだよ。今は無理だぞ。麻紀の相手は自分で選べ」
「ぷっ。分かってるよ。今プロポーズされたって、こっちから願い下げですよーだ」
ほら、そうだ。
・・・・ったく、麻紀って奴は。


