「ご注文は?」


そう聞かれて、麻紀はサバ味噌定食を、俺は野菜炒め定食をそれぞれ注文した。

どちらも、この店で俺たちが頼んでいたお決まりのメニューだ。


「すぐに用意するわね」


注文を聞くと、奥さんはそう言って店の奥へ戻っていった。

“いつもの”と言えば通じる注文をわざわざ聞いた奥さん。

・・・・気を遣ってくれたのだろう。


「迷惑・・・・かけちゃったね、いろいろと。おかげで私は綺麗さっぱり別れられたけど、誠治はあのあと、ちゃんと誤解を解けた?」


麻紀が聞く。


「つい最近な。だから今日、麻紀と会ってる。彼女に言われて、笑顔でさよならしたいと思って」

「そう。なんて言ったらいいか、う〜ん・・・・おめでとう、かな。じゃあ、つき合いはじめたの?」

「なんだろうな、それとはまたちょっと違う。これから、かな」


定食が運ばれてくるまでの間、する話は決まっている。

他愛もない近況を報告し合ったところで、それは何にもならないことを麻紀も俺も分かっていた。

さっそく話しはじめよう。