彼女が帰り際に巻き起こした風圧で書類がバラバラになりかけ、とっさに手で押さえ込んだ。
同時にドアに目を向けると、観音開き型になっているそれは、左右バラバラに大きく開閉している。
すごい勢いだったようだ。
どっちもバラバラか・・・・。
そう思うと笑いが込み上げ、急に静かになった事務所で「フッ」と声がもれてしまった。
こんなに心が軽くなったのは久しぶりだった。
それは、いつも突然で、どちらかといえばお節介な梅村綾の“おしゃべり”のおかげだ。
モッサの気持ちもありがたい。
モッサの誠意に報いるためにも、長澤にきちんと謝って、それから告白したい・・・・。
結果はもう考えない。
過去に捕われたりもしない。
長澤が首を横に振るのなら、そのときは一生片想いのままでいい。
もし逆だったら・・・・。
そのときは、誰にも負けないくらいに長澤を愛して、悲しい涙は二度と流させたりしない。
・・・・希望の光が見えた気がした。