『待つ』と言った以上、もしかしたら後に退けなくなっただけかもしれないと思ったことがあった。
・・・・モッサ君はあたしに“恋人らしい関係”を求めてこないから。
手をつないだり、キスをしたり、その先も・・・・何も求めない。
でもそれは、ただのあたしの勘違いで、本当に『待つ』という意味そのままだった。
気持ちがどうにも不安定で、なかなか眠れなかった夜。
泣きながらモッサ君に電話をかけたときもそう。
「ねぇ、今からそっちに行ってもいいかな?」
「今、布団の予備が・・・・そうだ!休みが合ったときに長澤が気に入るやつを一緒に買おう!」
「・・・・」
「なに焦ってんだよ。ゆっくりでいいんだ、ゆっくりで。な?」
「・・・・うん」
こうして自暴自棄になりかけていたあたしを優しく制してくれた。
・・・・モッサ君の優しさは、どこか登坂さんに似ている。
こんなときにまでそう思ってしまう自分がたまらなく嫌だった。
モッサ君は逃げ道まで作ってくれている・・・・それが申し訳なくて、あたしはまた泣いた。


